着床って具体的に何なの?

成長した受精卵(胚盤胞)が子宮内膜とくっつくことです。
着床すると胎盤を介して母親から栄養を効率よく受け取ることができます。

では、着床して胎盤をつくるまで受精卵は何をしているのでしょうか?
受精卵は黙って漂っているのでしょうか?
栄養をもらえずに孤独なサバイバルをしているのでしょうか?

ということで、このページでは着床までの受精卵の冒険を見ていきます。
卵管から子宮へ
まず、卵管で受精が起きて、受精卵ができます。
受精卵はそのまま卵管内を下りていって子宮へ移動するわけですが、黙って移動しているわけではありません。
移動している間に受精卵は分裂(卵割)を繰り返して、体の内側に器官をつくる準備をするレベル(桑実胚胞胚)まで成長します。


まるで子供(胚子)が勝手に成長しているような書き方ですが、実はその裏で母親からの重要なアシストがあります。

アルブミン層
卵管からアルブミンというタンパク質が分泌されていて、これが受精卵の透明帯の外側にどんどんコーティングされていきます(雪だるま形式)。
そうして透明帯の外側にできるのがアルブミン層ですが、これはザックリいうとタマゴの白身と一緒です。
この白身は受精卵を保護したり、栄養補給の役目を果たすので、着床前の子供は母親からの救援物資を受け取りながら成長しているのです。



実は受精から子宮到達まではウシでは約5日、イヌでは約一週間、ヒトでも3日前後かかります。
なのでこの長時間を胚子は一人で生活しなければいけません。そのために、母親からありがたい仕送りを貰いながら命を繋いでいきます。
こうして卵管内を無事に成長しながら通過した胚子はいよいよ子宮に到達します。

着床準備と着床

今までは母親からの仕送りで自炊していた胚子にとって、着床して胎盤を得ることはまさに実家ぐらし
経済的にも能力的にも厳しい胚子にとっては胞胚腔から手が出るレベルで欲しいものです。
しかし、子宮に到達したからといってすぐに着床がおこるわけではありません。
胚子も子宮も、この時点ではまだ胎盤をつくるのに十分な用意ができていないのです。

胎盤をつくる準備って、何をするの?

子宮に到達してからの動きを、胚子側、子宮側に分けて見ていきましょう。

胚子側
胚子は子宮の筋肉の運動によって着床の準備ができるまで子宮内を漂い続けます
この間、子宮腺から分泌される酵素により胚子のアルブミン層は分解され、さらに胚子が透明帯を破って出てくる(孵化)ので、胚子はかなり身軽になります。
こうなると胚子は胚盤胞という段階になり、包んでいたものが無くなったのでどんどん大きくなっていきます。
この時も子宮腺から栄養(子宮乳)が分泌されているおかげで胚盤胞は成長できます。
胚盤胞の外側の膜は栄養膜と言われ、栄養膜がこの子宮乳を吸収しています。この栄養膜もまた成長し増殖し、とうとう子宮と繋がるプラグ(絨毛)を生やすようになります。
絨毛の生え方はウマでは全体的に生えますが、その他の種では多くが部分的です。
※ちなみに絨毛が生えた栄養膜を絨毛膜と呼びます。
絨毛が生えたところで、胚子側は胎盤形成の準備が完了! ということになります。

子宮側
着床時期が近づくと子宮内膜は厚く増殖し(着床性増殖)、子宮腺も一緒に肥大増殖します。
さらにこうした子宮内膜の変化に合わせて子宮筋も増大して血液が沢山入ってくるようになります。
こうして子宮内膜をふかふかべットにリフォームすることで胚子の受け入れ体制が完了となります!



胚子と子宮両方の準備ができると、いよいよ胚盤胞(胚子)の絨毛が子宮内膜と接着して、胎盤という子の成長に極めて大切な接着構造が出来上がるわけです。

まとめ
卵は卵管で受精し受精卵となり、母親からアルブミンという支援を受けながら数日かかって子宮へ到達しました。
子宮では受精卵が透明帯、アルブミン層という殻を破って胚盤胞になり、母親から子宮乳の支援を受けて着床の準備を整えました。
一方で子宮内膜を厚く、栄養を運ぶ血液を豊富にした母親も着床の準備を整えます。
両者はいよいよ接着して、これからウシでは280日、ウマでは340日、イヌやネコでは60日の長い妊娠期間へ移行します。

関連ページ
着床形式

参考

動物発生学 第2版 文永堂出版 2012
獣医繁殖学 第4版 文永堂出版 2012

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